リーダーシップ論
経営者はもちろん、中間管理職もその部署においてはリーダーです。リーダーとはどうあるべきか。自分がその立場になったとき、頭を悩ませる方もいるでしょう。
部下を頭ごなしに怒ってはいけないし、かと言ってやる気を見せない社員に対してどう接するべきか。あるいは、説明してもなかなか理解してくれない部下を、どう導くべきか。一人で働く方がよっぽど楽だ、と思ってしまう人も多いと思います。
ここでは、リーダーシップについての研究・理論を一部ご紹介します。
レヴィンのリーダーシップ研究
レヴィンはアメリカの心理学者です。レヴィンはリーダーシップのあり方を3つに分類し、その作業効率を評価しました。
①専制的リーダーシップ
一時的には作業効率はあがりますが、リーダーに対する不満、メンバー同士での攻撃性が高まります。また、リーダーへの依存性が高くなり、メンバーは自発性を失いますので、人材育成には適しません。
部下のレベルが低く、短期的に成果を上げたい場合には効果的であると言えます。また、組織の立ち上げ時に用い、のちに他の類型に移行するのであれば有効なアプローチです。
②放任的リーダーシップ
メンバーは士気を喪失します。作業の質、量が低下し、作業効率は最悪になります。
③民主的リーダーシップ
長期的には最も作業効率が高まります。集団としての団結性が高くなり、メンバーの満足度も上がります。メンバーは自発的に業務を遂行するので、個々の能力も高くなっていきます。つまり、基本的にはリーダーは「民主的」なリーダーシップを取るのが正解ということになります。
民主的リーダーシップとは、業務の内容などはメンバーが討議して決定し、リーダーはそれをサポートするというものです。
システムⅣ理論
リカートは、リーダーシップのスタイルをシステムⅠ~Ⅳの4つに分類しました。システムⅠからⅣに向かうに従い、リーダーは部下を信頼し、権原を与えるようになります。また、コミュニケーションも十分に取れていくこととなります。
- システムⅠ(独善的専制型)
- システムⅡ(温情的専制型)
- システムⅢ(相談型)
- システムⅣ(集団参加型)
システムⅠでは、リーダーは懲罰の恐怖で部下を動かし、部下は不信感を持ちます。生産性は一定以上には上がりません。
反対にシステムⅣでは、部下の満足度が上がり、生産性も高くなります。
システムⅣにおいては、①部下は相互に(リーダーも含め)支え合う関係である(支持的関係の原則)②集団内部の意思決定に部下を参加させる(集団的意思決定の原則)③部下は自発的に高い目標を掲げる(高い業績目標の原則)が必要となっています。
SL理論(状況理論)
SL理論はハーシーとブランチャードが考案したものです。Situational Leadershipの和訳から、状況理論などと呼ばれます。
部下の成熟度に合わせて、リーダーはどのように振る舞うべきかを示したものです。リーダーは支持的行動と援助的行動を状況に合わせて使い分け、部下にその時点での最高のパフォーマンスをさせることを目的とします。
部下の成熟度は、目標を達成する意欲、責任を負う意思と能力、集団における経験で判断されます。
①指示型リーダーシップ
部下の成熟度が非常に低い場合に有効なスタイルです。とにかく詳細に指示を出します。実際の作業を通じて、経験を増やしていきます。
②説得型リーダーシップ
部下の成熟度が上がってくると、興味のある情報を与えます。質問に対して回答し、成長意欲を増進させ、さらにモチベーションを高めます。
③参加型リーダーシップ
相互に情報を交換し、意思決定にも参加させます。部下の自発的な行動を生み出し、パフォーマンスは向上します。
④委任型リーダーシップ
成熟度が完全に高まった場合、権限を大幅に委譲して、部下に仕事を任せることができます。部下は自分の能力を最大限に発揮し、最高のパフォーマンスをするようになります。
リーダーシップと変革
リーダーシップとマネジメント
ジョン・P・コッターは、リーダーシップとマネジメントを異なるものと定義し、組織を率いるためには、その両方が必要であると説いています。
「リーダー」はリーダーシップを発揮し、「マネージャー」はマネージメントを行なう。どちらが上かは明確な定義はありません。中小企業と大企業でも、その役割分担は異なってくると思われます。
ただし、コッターは、変革の時代においては、リーダーシップが重要になるとしています。
コッターによる両者の定義は以下のとおりです。
リーダーシップ | マネージメント | |
役割 | 組織をより良くするための大規模な変革を成し遂げる | 複雑な環境にうまく対処し、既存システムを運営する |
テーマ | 方向を定める(ビジョンと戦略を定める) | 計画立案と予算策定 |
人材の組織化 | 人心の統合(皆のベクトルを合わせる) | 組織化と適切な人材配置、実行のための仕組みづくり |
実行 | 動機づけと鼓舞 | コントロールと問題解決 |
リーダーは会社の先頭に立ち、部下たちを背中で引っ張ります。マネージャーは部下の顔を見ながら、現時点で可能な調整を行なうことになります。
小さな会社では、経営トップが両者を兼務する場合もありますが、どちらかに偏るのではなく、両者を演じ分けることが必要になります。リーダーの役目ばかりでは誰もついてこないかもしれないし、マネージャーの役目ばかりでは、変革をすることができなくなります。
変革のプロセス
コッターは大規模な変革を推進するために、以下の8段階のプロセスが有効であるとしています。
リーダーが変革を行なう場合に、下記の手順に抜けがないかを確認しなくてはなりません。