経営ビジョンの意義
経営ビジョンとは
経営ビジョンとは、 企業の「将来のあるべき姿」を明らかにしたものです。しかも、大切なのは、あるべき姿だけではなく、そこに至るためにどうすべきかという方向性まで示されるべき、ということです。
単に将来「こういう会社にしていきたい」と思ったとしても、どうすればそうなるかを示さなければ実効性はありません。ビジョンを作成した経営陣はもとより、社員にはまったく伝わることはないでしょう。
経営ビジョンは、会社の将来をわかりやすい言葉で書いているものですので、ホームページなどに掲載し、その他社員の目に触れやすい箇所に掲示してあるといいでしょう。
類似の概念
経営ビジョンと類似の概念に下記のようなものがあります。
言葉の意味は人によって説明も異なれば、受け取る側の解釈も異なるので、明確な区別は難しくなっています。そこで、 ここでは、経営ビジョンは「経営理念」より導き出されるもので、「行動指針」の基礎となるもの、として定義します。
経営理念、企業理念・・・企業活動のもととなる基本方針。経営理念と企業理念も分けられる場合がありますが、その場合、経営理念は経営者の理念、企業理念は企業の一貫した理念とされるようです。
行動指針・・・どのように考え、どのように行動するかを決定する指針。
クレド・・・社員が心掛けるべき「信条」のこと。
フィロソフィ・・・経営哲学のこと。
ビジョン・・・将来のあるべき姿のこと。
ミッション・・・企業が遂行すべき任務のこと。
バリュー・・・組織で共有している価値観のこと。
※「ビジョン・ミッション・バリュー」はピーター・F・ドラッカーが唱えた概念で、これらは「経営理念・経営ビジョン」を分解して説明した内容とも言えるものです。この場合の「ビジョン」と「経営ビジョン」は厳密には同じものではありません。
>>経営理念とはについてはこちらへ。
経営ビジョンを作るメリット
経営ビジョンを作るメリットは、
- 会社の方向性が明確になり、事業の方向決定に迷いがなくなる。
- 会社の将来を社員と共有することができて、モチベーションを高めることができる。
- 行動指針を作成することができ、業務の効率性を高めることができる。
経営ビジョンを作る
経営ビジョンの要素
ジョン・P・コッターは、変革のステップのために必要な「ビジョン」について、「 将来のあるべき姿を示すもので、なぜ人材がそのような将来を築くことに努力すべきなのかを明確に、あるいは暗示的に説明したもの」と定義しています。
そして、「ビジョン」には、下記のような要素が備わっていると優れたものになるとしています。
- 将来の姿がはっきりイメージできる
- 従業員や顧客がそうなることを期待している
- 実現可能で持続可能である
- 明確な方向性が示されている
- 変化に対して柔軟に対応できるものになっている
- 5分以内で説明できる
これは、「経営ビジョン」に関しても同じように考えることができるでしょう。
作るときの留意点
経営ビジョンは理想だけを掲げた、ただの旗印にならないことが重要です。経営ビジョンに向かって、実際に社員がどのような行動をすべきかということが導き出されるものでなくてはなりません。
そのため、経営ビジョンには、「誰に」「どのような価値を提供し」「どうやって差別化するか」ということが含まれていることが必要です。
社員にわかってもらうことが前提ですので、ビジョンは明瞭で、かつ社員の共感を得られるものであることが必要です。
幹部や社員の意見を聞きながら作成することによって、皆が共有しやすいものにすることができるので、時にはそういう手法も有りうるでしょう。ただし、その際には、皆の意見を取り入れすぎて、低すぎる目標設定や曖昧な表現にならないように注意してください。
有名な経営ビジョン(クレド)の例
ここで、有名なクレドの例をあげますので、参考にしてください。。長いので、一部を抜粋しています。全文については、各社のホームページでご確認ください。
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